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実はキャリア迷子にもおすすめ!? 世界と繋がり人の心を動かす、ライターの仕事(坂口ナオ)

Intro
今回は、街角キャリアラボで「ライティング講座」を担当いただく坂口ナオさんに「ライティング」というスキルについて語ってもらいました。坂口さんは、大学卒業後に特許事務所で働いたのちキャリアを転向し、2013年に、ライターとしての活動を開始。旅行・ビジネス・ライフスタイルなど多岐にわたる記事を執筆し、2018年にフリーライターとして独立以降は、“ローカル”をキーワードに活動中です。記事の執筆以外に、Webメディアや紙書籍の編集業にも携わっています。
そんな坂口さんのお話は、聞いているだけでいろんな場所に足を運んでみたくなる、好奇心あふれるものでした。
※この記事は、2021年7月時点の情報をもとにしています。

100人インタビューで、キャリアを転向! ライティングを仕事にすると決めたきかっけ

街角編集部
街角編集部

まず、新卒で特許事務所を選ばれたということですが、理由は何だったのでしょうか?

坂口さん
坂口さん

お恥ずかしいのですが、深い理由はありませんでした。当時、やりたいことが全く見つからず、父がしていた明細書書きの仕事を見て、これならずっと好きだった「書くこと」を生かせるかもしれない、と漠然と思ったんです。

小さい頃から日記を書いたり、本を読んだりすることが好きでしたし、大学時代にはブログが流行りだして、書くことで周りから反応が得られる楽しさも感じていました。それで、特許事務所で事務員として働きながら資格の勉強をすることに決めました。

街角編集部
街角編集部

書くこととは関係があるものの、ライターとは離れたお仕事をされていたんですね! では、どんなきっかけでライターという職種に出会ったのでしょうか?

坂口さん
坂口さん

特許事務所で事務の仕事を始めると、実際の自分はもっと好奇心旺盛でクリエイティブなことが好きだと気が付きました。趣味レベルですが、企画を立てたり、書いたり、そういうことが好きだな、と。加えて、30歳手前になると人生を考え直すようになり、もっと自分の視野を広げたいと思いました。そこで、いきなりなんですが、“100人インタビュー”と称して、出会った人や友人に仕事の話を聞くことにしました。たくさんの人の話を聞けば、何か発見があるかもしれない。そんな気持ちでした。

そのインタビューの中で、ライターの仕事をする人に出会いました。まさに、書くことや好奇心を生かせる仕事であり、興味を惹かれました。話を伺ったその方は、「とりあえず一本書いて賞を取った」そうで、ライターになるためには、出版社への就職など、決まったルートがあるわけではないのだとその時初めて知りました。

街角編集部
街角編集部

100人インタビューなんて、すごい行動力で驚きました! その後は、どのようにライターの道を進まれたんですか?

坂口さん
坂口さん

その時ライターの話を伺った方に、「私でもなれますか?」と聞いたところ、「なれる! 仕事を辞めてきたらライターの仕事をあげるよ」と言われたことが一番大きな原動力となりました。

その後、特許事務所の仕事を辞めて、バイトで生活費を稼ぎながらライターの仕事を始めました。初めは仕事の取り方か分からず途方に暮れていましたが、これまで通り、友人との集まりやイベントなどに頻繁に顔を出し「ライターの仕事を始めた」と自己紹介していたところ、その場にいた人から仕事を依頼されることが立て続けに起こりました。もともと人との交流が多かったこともあり、そこからリアルの繋がりを軸にじわじわと仕事の輪が広がっていきました。

和歌にまつわる記事を執筆している様子。
資料が必要なものは、国会図書館や大学の図書館を活用するそうです。

徹底的な取材と、読者を想像することで生まれた反響

街角編集部
街角編集部

“人との繋がり”はライターとしてひとつキーワードになりそうですね。実際、ライターの方はどのようにお仕事をされているのでしょうか?

坂口さん
坂口さん

大まかな流れとしては、記事執筆の依頼を受けたのち、取材や資料収集などを通して情報を集め、依頼者の要望や読者のニーズ、取材対象者の意図などを想像しながら、記事を執筆します。私が大学生時代にやっていた趣味のブログと大きく違うと感じるのは、「取材」があることです。この情報収集がライターの命で、それらを通して、会えない人に会えたり、行けない場所に行けたりすることもこの仕事の大きな魅力です。

街角編集部
街角編集部

ライターが書く記事にもさまざまなジャンルがあると思いますが、どうやって得意分野は決まっていくのでしょうか?

坂口さん
坂口さん

雑食的にいろいろ書き続ける人もいれば、これと決めたジャンルに軸足を置いて書く人もいます。専門を作った方が仕事がもらいやすくなる傾向がありますね。私の場合、ライターになってすぐの頃は、観光情報・地域ニュース・ビジネス・テックなどさまざまなジャンルを引き受けました。ひと通り経験を積んだ後、2018年に雇われ編集者の仕事から再独立をして、以降は“ローカル”をキーワードにsotokotoTURNSコロカルのような地域系メディアでの執筆に取り組んでいます。

ローカルに興味を持ったのは、ライターとしての醍醐味である、色んな所に行って人の話を聞けるという魅力を最大限まで体験できるからです。特許事務所に勤めていた時や人生に悩んだ時も、色んな人の話を聞いたり、旅をしたりすることで元気をもらっていました。自分は本当にそういうことが好きなんだと思います。だから、今でも各地を訪れるたびに色んな刺激をもらっています。

街角編集部
街角編集部

刺激的な体験を沢山されてきたんですね。ぜひこれまでの取材事例についてもお伺いしたいです!

坂口さん
坂口さん

これまで書いてきたものはどれも大切な記事なんですが、特に印象に残っているのは「高知県のよさこい踊り66年の歴史」について記事を書いたときのことです。

“よさこいエリート”と振り返る、商店街と共に歩んだ高知「よさこい祭り」66年の全歴史という記事を書いたのですが、66年という地方の長い歴史を取り上げるにあたって、現地を訪問してたくさんの人に話を聞いて、県や市にも掛け合い、過去66年分の新聞や国会図書館に所蔵されている資料を読みあさりました。よさこいの歴史を詳しく書いた記事がWeb上に存在していなかったため、記事を公開すると、よさこい界隈から大きな反響がありました。過去一の大作になったと感じています。

高知県からの体験レポート作成依頼で、よさこい祭りに踊り手として参加したときの様子
街角編集部
街角編集部

66年分の歴史を振り返る、というスケールの大きさに驚きました! ほかにはどんな記事を執筆されたのでしょうか?

坂口さん
坂口さん

子育て世代を応援する暮らしづくり複合施設〈みちくさくらす〉が新宿にオープンという記事を書いたことも印象深いです。保育施設とカフェを兼ね備えた新宿の施設なんですが、特にこの事例の場合は、PV数(ページビュー数)や実際に店舗を訪れる人の数に大きく貢献できました。

反響を得られる記事に必要なのは、取材意図(何を伝えたいか)を明確にすることと、読者を徹底的に想定(誰がどんな気持ちで読むのか)することだと思っています。

街角編集部
街角編集部

具体的に、その事例ではどんな想定をされたのでしょうか?

坂口さん
坂口さん

この事例においては、記事を読んでいるのは、実際に何か地域おこしなどの活動をすでに行っている人が多いことが分かっていました。そこで、施設の特徴の中でも、「1年間という短期間」、しかも「妊娠中」に施設のオープンまで達成したという部分に焦点をあてることにしました。条件が揃っていないにもかかわらず達成できた事実は、活動されている方の心を動かすと考えたからです。

さらに、取材をする際には事前に相手に意図を伝え、取材のコツ(街角キャリアラボのライティング講義で詳しくお話しします)も意識して話を伺いました。執筆においては分かりやすい導入文で引き付けて、読みやすい文章で書くことを心掛けました。その結果、記事を出した途端にPVが跳ね上がり、拡散もしてもらうことができました。

街角キャリアラボでも、ライターを募集しています!

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ライターの魅力は、常に刺激に満ちていること。

街角編集部
街角編集部

素敵なお話をありがとうございます。これまでの経験を経て、ライターの腕が最も試されるのはどんな瞬間だと感じていますか?

坂口さん
坂口さん

いかに情報を集めてくるか、という点に尽きると思います。繰り返しになりますが、ブログとライターの一番大きな違いは「外から情報を集めてくる」点。私自身、人に会うこと、いろんな場所に行くことが好きなので、ライターとして働いていて本当に楽しいです。

街角編集部
街角編集部

改めて、ライターの魅力・面白さを教えてください!

坂口さん
坂口さん

普段、同じ場所で働いて生活をしていたら会えないような人に会えて、行けない場所に行けることです。例えば、映画字幕の翻訳家として有名な戸田奈津子さんにお話を伺ったり、絶対に自分ではやろうと思わない「よさこい」を踊ったり。

気付いたら全国に知り合いができていて、よさこい66年の歴史をたどった高知県なんて、第二の故郷のようになっています。何かひとつの仕事をしていたらできない体験をできていると感じます。ライターの仕事は常に刺激にあふれていて、好奇心が旺盛な人にとっては魅力的過ぎる仕事だと思います。

青森のせんべい店にて。このときは1週間ほど滞在して、まだ知られていない街の魅力をリサーチしたそう。
街角編集部
街角編集部

ライターとしてのスキルは、日常生活ではどのように役立っていますか?

坂口さん
坂口さん

ひとつは、いろんな経験ができるので、興味のあることが見つかっていないときに自分の関心分野を発見するのに役立つと思います。雑食的によく分からない取材も引き受けてみると、視野が広がって、面白いと思えることが見つかるはずです。やりたいことがまだ見つかっていない若い人や、キャリア迷子になっている人にとっても、絶好の通過点になると思います。

もうひとつは、誰とでも仲良くなれるスキルが身につくことです。取材においては、傾聴スキルや相手に気持ちよく話してもらうスキルが求められます。それを繰り返していくと、自然と自分の意図しないところでも、人といい関係性を築けるようになっていくと思います。

街角編集部
街角編集部

ありがとうございます! 最後に、ライター・ライティングに興味を持った学生に向けてメッセージをお願いします。

坂口さん
坂口さん

ライターという仕事は、色んな事に興味を持っている人や、逆に何に興味を持っているか分からない人にも素晴らしい仕事になると思います。貴重な体験ができる唯一無二の仕事で、場所も移動し放題、人にも会い放題、何でもできる仕事です。

また、ライティングは、汎用性の高いスキルでもあります。文章を書くことも、人の話を聞くことも、どんな場面においても必要なことだからです。今回は詳しくお話ししていませんが、ライターの延長線のお仕事として、全国上映の映画のPR動画制作に携わったこともあります。それができたのは、企画を立ててストーリーを作る力がライティングの仕事を通して評価されたからだと思います。

このように、道がいくらでも開けて、そしてパソコンひとつあれば始められるスキルなので、興味を持った人はぜひトライしてみてください!

MEMO

坂口さんによる「ライティング講座」は、2021年10月28日より全3回で開催されます!申し込みはこちらから!