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「世の中の流れを変える」意外と知らない“広報・PR”の世界について、7社渡り歩いたプロに聞いてみた(村田喜直)

Intro
今回は、街角キャリアラボで「広報・PR講座」を担当いただく村田喜直さんに「広報・PR」というスキルについて語っていただいた。大学卒業後は、新卒で地域・環境に関するNPO法人で働き、代表を務めた村田さん。一方、学生時代から広告やコピーライティングに関心をもち、その後広告制作会社へ転職。イギリスのビジネススクールに留学後は「広報・PR」を専門に、横浜DeNAベイスターズの創業期広報メンバー、ネットの高校として有名なN高校のPR責任者などを経験した。現在は、エンタメ系IT企業でPRやマーケティングを担当している。
そんな村田さんのお話は、私たちがイメージしがちな“PR”とは全く異なるものだった。
※この記事は、2021年7月時点の情報をもとにしています。

「書くことで伝える」「間接的に社会を良くする」が、今のキャリアの源。

街角編集部
街角編集部

まず、新卒でNPO法人を選ばれたということですが、理由はなんだったのでしょう?

村田さん
村田さん

大学時代に地域づくり・環境教育に関わっていたことと、就職氷河期の頃で就職先に悩んだことの2つがあります。大学時代、高齢者が多く過疎化している町に、ボランティアとして関わっていました。そして、私が卒業するタイミングで団体が解散されそうになっており、それなら引き継がせてもらおうと思ったのが理由の1つです。

街角編集部
街角編集部

大学時代から、NPO法人に関わっていたのですね。もう一つの理由である、就職氷河期についても教えてください!

村田さん
村田さん

当時、私はコピーライターでの就職を目指していました。とある放送作家に憧れ高校時代から書くのが好きだったことや、表に出るよりも間接的に企画を仕掛けて話題を作ることに魅力を感じていたからです。しかし、就職氷河期でうまくいかず、1年間就活浪人もしましたが、なかなか希望のところから内定をもらえず悩みました。最終的に、妥協した就職ではなく、やりがいを感じられる仕事で社会に出たいと考え、当時から関わりのあったNPO法人を選びました。

就職活動時は、広報・PRではなく、広告業界やコピーライターに興味を持っていました。けれど、当時から一貫して「社会に響く仕掛けを作って発信すること」に惹かれていたと思います。また、そうした仕掛けで人を動かし、社会を良くしたいとも思っていました。けれど、社会を良くするにはどんなアプローチが最適なのか、はっきり分かっていないような感じでした。 

街角編集部
街角編集部

では、現在専門にされている広報・PRとはどのような職業なのでしょうか?

村田さん
村田さん

PRとは、“Public Relations”の略で、社会との関係づくりです。社会とコミュニケーションを取りながら第三者視点での関係を築き上げることを指します。少し難しいですね・・・。

例えば、ニュースなどで世の中に役立つ企業活動が取り上げられていることがありますよね。あれは、一方的に企業から発信しているわけではなく、TV局や新聞社の記者から見た印象や評価を伝えています。そしてその背景には、PRが関係しているんです。

ニュースに取り上げてもらうためには、第三者(世間の人々)から見て、企業の取り組みが社会的に意義あるものだと思ってもらう必要があります。そこでPR担当者は、そう思ってもらえるように社会の文脈を意識したメッセージ性を込めて企画をし、メディアの方に伝えているんです。

街角編集部
街角編集部

PRは自分から売り込むことだと思っていましたが、違うんですね!

村田さん
村田さん

自己PRやPR記事という言葉の方がよく耳にするので、誤解が多い言葉になっていますね。自己PRは自己アピールで良いと思いますし、PR記事はお金を払って掲載する広告の一種です。PRは、売り込んで話題にするのではなく、話題になる必然性を作る仕事だと思っています。

街角編集部
街角編集部

では、村田さんは、広報・PRにどのようにして出会ったのでしょうか?

村田さん
村田さん

私がPRに出会ったのは、広告制作会社でクライアント企業のCSR(企業の社会貢献活動)に関するコミュニケーション支援をしていく中ででした。自社サイトや広告を通してCSR活動について情報発信していくだけでいいんだろうか?と疑問を持つようになったのです。

こんなに素晴らしいCSR活動なのに、お金をかけて宣伝しないと社会に伝えられないって何か変だなと。一方、欧米では、環境負荷の高い企業が一部のエコ活動を誇大に打ち出すことで「グリーンウォッシュ」(うわべだけ環境保護に熱心に見せること)だと非難される事例も増えていました。欧米の事例や広告以外のアプローチについて調べていくうちに、広告はお金をかけて会社が言いたいように出す一方、PRはメッセージをメディアに取り上げてもらうことで世論が形作られていくものだと知りました。

街角編集部
街角編集部

その後、どんな風にPRの道へと進んでいったのでしょうか?

村田さん
村田さん

イギリスのビジネススクールに留学し、PRについて深く学びました。特に、欧米ではことばや文字の持つ力が大きく、PRと報道機関の適切な関係が成熟した社会を形づくっているように感じました。企業活動だけでなく、政治の世界にこそPRは重要で、下馬評を覆して初の黒人大統領となったオバマ大統領の演説や選挙キャンペーンにもPRのプロが関わっていたりします。どうやって世論を作るかを学び、社会を動かすほどの影響力を持つPRにどんどん惹かれました。

留学から帰国後は、戦略コミュニケーションコンサルティング会社に入り、PRやコミュニケーションの仕組みや仕掛けを戦略的に構築するプロ集団で実践的に理解を深めていきました。その後、横浜DeNAベイスターズN高校などの事業会社でPRを専門に仕事をしています。

広告業界については、こちらで詳しく解説しています!

【業界解説】広告業界

複数の企画の積み重ねによって、少しずつ世論を変えていく広報・PR

街角編集部
街角編集部

村田さんが、実際にPRを行った事例について教えてください!

村田さん
村田さん

人の行動が変わり、社会が動いたと実感できたのは横浜DeNAベイスターズでの経験です。PRは単発の企画で実現するものではないですが、一例としては野球の試合後に球場でファミリーキャンプをしよう!というものがありました。当時は人気も低迷していた球団でしたが、「コミュニティボールパーク」というコンセプトを打ち出し、横浜の人々に慣れ親しんでもらう場所として、球団や球場のPRを行っているところでした。

そのコンセプトを象徴的に伝える企画として、試合後の球場に横浜に住む家族がテントを張ってキャンプをしました。試合の余韻が残る球場で家族と食事や会話を楽しみ、一晩を過ごす。そうして、野球との心の距離を縮めて欲しい、家族の思い出が生まれた大事な場所にして欲しい。そういったメッセージを込めて球場とキャンプを掛け合わせました。

街角編集部
街角編集部

素敵な企画ですね!実施した結果、どうなったのでしょうか?

村田さん
村田さん

夜の球場にたくさんのテントが並び、ランタンが灯る様子は幻想的なシーンとなり、家族の行楽が話題になるゴールデンウィークの時期だったこともあり、NHKの全国ニュースにも取り上げられ、ネットでも話題になりました。この一個の仕掛けで大きく変わったわけではないと思いますが、こうした企画を一つひとつ積み重ねたことで、横浜の地域に根付いた球団として認められるようになり、今では多くのファンに支えられ、盛り上がる球団となっています。

街角編集部
街角編集部

横浜DeNAベイスターズにそんな経緯があったとは驚きました!他の会社ではどのようなことに取り組まれてきたのでしょうか?

村田さん
村田さん

もう一つ、印象的だったのはN高校のイメージを広報・PRによって180度変えられたことです。開校当初こそ大きな注目を集め、たくさんのニュースになっていましたが、ユニークな話題だけが先行し、教育界からは「目新しく面白いだけで、ちゃんと教育の機能を果しているのか」といったネガティブな印象を持たれていました。一方、N高校がオンライン教育によって実現しようとしていたのは、地域間教育格差の解消や病気や不登校の生徒への教育機会の提供、通常の高校の枠には収まらずにはみ出てしまった生徒が好きなだけ追究できる学習機会の創出など、多様なニーズを持った子どもたちの世界を変えられる可能性でした。

そこで、特別授業の企画をメディアに報道してもらったり、ブログ・SNS等での情報発信を通して、オンライン教育の価値や可能性を子どもたち、保護者、教育関係者に理解してもらえるようPRに取り組みました。特別授業の例を一つ上げると、病気で学校に行けない生徒が遠隔ロボットで自宅から教室に参加できるようにする取り組みを行ったことがあります。映像視聴による授業参加ではなく、自らロボットの画面越しにディスカッションに参加できるようになりました。これもTVや新聞、ネットニュースで報道されたことで、N高の目指している世界観を多くの人に知ってもらう機会になったと思います。

街角編集部
街角編集部

その後どのようになっていきましたか?

村田さん
村田さん

多様な学習ニーズの解決といった社会課題をネットやテクノロジーによって実現できる可能性を伝え続けました。同時に、PR担当として、教育専門記者や文科省や教育委員会、教育系の市民団体との意見交換の機会を積極的に持ち、N高校にとって重要なステークホルダーとのリレーションを築いていきました。次第にN高のイメージは変化し、生徒数も大きく増え、わずか3年ほどで日本一の生徒数を抱える高校になりました。また、今このコロナ禍においては、オンライン教育のノウハウが評価されています。

街角編集部
街角編集部

お話しいただいた2つの事例について、どんなやりがいを感じましたか?

村田さん
村田さん

二つお話ししましたが、共通して言えるのは、こうした仕掛けを少しずつ地道に重ねていって、次第に社会の変化をもたらすことができたという点です。PRというと、いかにバズる話題性のある企画をつくるかといった華々しい仕事の印象を持たれることもありますが、私が大事にしていることは、第三者視点でポジティブに評価される関係性を一つひとつ作っていくことです。そのための仕掛け作りがPRの役割であり、やりがいだと思います。

街角キャリアラボYoutubeでも、「広報職」について解説しています!

広報・PRの魅力は、社会の変化を作ることができるところ

街角編集部
街角編集部

改めて、広報・PRの魅力とはどういうところにあるのでしょうか?

村田さん
村田さん

「世の中がこうなったらいいな、社会の課題を解決したいな」を実現できるところです。志したときから、この魅力は変わりません。大きいことを言っているように聞こえるかもしれませんが、例えばPR活動によって、そもそも社会において問題になっていなかったことを浮き彫りにすることだけでも価値があります。

先ほどの例においても、オンライン教育が進んでおらずその必要性も考えられていなかった時代に、「ネット制高校は子どもたちに必要か?」と考えるきっかけを生みました。社会が動く仕組みを理解して仕掛けを作るという発想法は、様々な仕事にも活かせるすごく魅力的なスキルだと思います。

街角編集部
街角編集部

なるほど。それは、日常生活において誰かを動かす際にも役立ちそうですね。

村田さん
村田さん

そうですね(笑)PRは、相手がどう受け取ってどう行動するかを徹底的に考えます。言うなれば、戦略的なコミュニケーションです。コミュニケーションは誰しも使うもので、社会人基礎力としても求められています。もちろん、コミュニケーションを取らずとも、武力・お金・権力などで人を動かすことはできるでしょう。

けれど、恨み妬み反感を買わず、持続的に効果を生むことができるのは、納得や共感をもとにしたコミュニケーションによって人が動いたたときです。皆さんもぜひ、誰かとコミュニケーションをする時、どんな言葉を使って、どんな態度で人と接しているか考えてみてください。コミュニケーションの仕組みに気がつくと思います。

街角編集部
街角編集部

素敵なお話をありがとうございます。最後に、この記事を読んでいる学生にメッセージをお願いします!

村田さん
村田さん

大学生が頭に思い浮かぶ職種には限界があると思います。私自身も、広報・PRの世界にのめりこんだのは社会人になってからでした。ですが、知らないからと切り落とすのではなく、興味がないからこそ少し覗いてみる、興味を持ったら何かしら行動に移してみると視野が広がると思います。実際に仕事にしなくても、例えば関連する本を読んでみたり、授業を受けてみたりなどできるはずです。そんな気持ちで、今回の「広報・PR講座」も受けてもらえたら嬉しいです。

MEMO
村田さんによる「広報・PR講座」は、2021年9月28日より全3回で開催されます!申し込みはこちらから!