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12年間大学生だった喜多恒介が送る「2021年の大学生へ」

喜多恒介という人物を知っているだろうか。かつて「日本一有名な大学生」として名を馳せ、官民と連携し数々の大学生むけキャリア支援プロジェクトの立ち上げや展開に関わってきた人物だ。トビタテ!留学Japanやエンカレッジという名前を聞けば、2021年の大学生でも聞いたことがあるプロジェクトなのではないだろうか。学生でもあり、経営者。それが喜多恒介。

そんな喜多君が、12年間という大学生活を遂に終え、卒業するという。
今回は、12年間大学生をしてきた彼が今、「大学生」に何を思うのかを聞いたー。
記事の最後には、喜多さんが大学院で研究してきた「やりたいことを必ず見つける方法」資料を特別に掲載!

この12年間で、大学生はどう変わったのか

羽田
羽田

卒業おめでとうございます!12年間大学生だった人はなかなかいないと思うのですが、学部と院それぞれ何年間いたんでしたっけ?

喜多
喜多

東京大学の学部で過ごした6年、慶應SFCの大学院で過ごした6年ですね。いや、色々ありました(笑)。青春が終わったな、という感じです。

羽田
羽田

喜多君はただ単に12年間大学生をやってきたわけではなく、大学生や若者のキャリア支援に関わってきた12年とも言えると思います。この12年を振り返って、「大学生」がどう変わったのかを今日は聞きたくて。12年くらい前は学生時代全盛期ですよね?

喜多
喜多

そうですね。僕も大学1,2年まではいわゆる普通の大学生でしたが、3年生になってから数々のプロジェクト立ち上げに関わってきました。当時はおっしゃる通り学生団体最盛期でしたね。いわゆる「アクティブ」と言われる大学生はみんな学生団体やプロジェクトを立ち上げていました。で、この12年間で最も変わったのは「活動の選択肢が無限に広がった」ということじゃないでしょうか。

羽田
羽田

と、言いますと?

喜多
喜多

12年前は自分たちで経験を取りにいかなければいけませんでした。SNSが爆発的に広がり始めた頃で、facebookなんかで情報を取りにいき、イベントを自分でつくり、自分たちで活動の機会自体を切り開いていくことが主流でした。ただ今はインターンや留学などの与えられる機会もたくさんあるし、学生や社会人とも繋がりやすい。Youtubeでも手軽に発信できる。そしてクラウドファンディングや奨学金や助成金や財団やVCや有給インターンなどでお金も得やすくなりましたよね。一般的なアルバイトだけじゃなくて大学生もさまざまなお金を得る方法がある。

羽田
羽田

確かに以前は大学生といえば大学の授業に出てバイトとサークルが一般的で、”意識高い”と言われるような学生が留学や学生団体、インターンシップをやっている、くらいしかバリエーションがなかった印象です。

喜多
喜多

大学の学生サポートも盛んになりましたね。だから挑戦のハードルは低くなったし、動こうと思った時に取れる選択肢はたくさんありますよ。

羽田
羽田

以前のインタビューで、「それなのに動かない大学生はちょっと厳しくなってきている」という話もされてましたもんね。

喜多
喜多

そうですね、インターンシップの参加者人数は50%を超えている、という調査もあるようですし、本当に機会が広がったなと感じます。ただ一方で気になることもあります。

羽田
羽田

なんですか?

喜多
喜多

他律的な行動が多い、ということです。「インターンシップに行かなければならない」という外からの動機によって行く学生が多い。内発的に醸成されたモチベーションじゃないのですぐやめてしまったり、成長につながらない場合もある。やはりね、学生に限らず人間というのは省エネ的な発想をしてしまうんですよ。誰かに言われた通りにやってる方が楽だし、ぶら下がっていたい。誰かがやってるらしいことをとりあえずやってみる、という方向に流れてしまうんです。

羽田
羽田

いいことでもある一方、弊害もある、と・・・。難しいですねそれは。でも喜多くんのこれまでの活動って、その機会を増やしてきたことでもあると思うんです。この12年間、ズバリ喜多君がやってきたことを一言で言うと何になりますか?

機会があるのに動かない。”モチベーション格差”を埋めたい。

講演や企業での研修依頼も多い喜多さん
喜多
喜多

段階によって色々変わりますが、僕がやってきたことを端的にお伝えすると「自分の意志を持って世の中に働きかける人を増やす」ことじゃないかなと思っています。もともと活動を始めたときに感じていた課題感は「機会が足りない」でした。学生が何かをやろうと思っても機会がないし、機会があってもそれを知る手段が少なかった。だから企業や政府など多様なプレイヤーと連携しながら様々な機会を作ってきました。ただ、2017年くらいですかね。なんとなく違和感を感じ始めたんです。「機会はもう十分あるんじゃないか」と。

羽田
羽田

先ほど出てきた話題ですね。機会はもう十分ある、と。

喜多
喜多

はい、ただそれなのにあまり大学生が変わっている感じがしなかった。機会は増えたのに大学生自体は変わっていない。機会は増えているのに動かない学生もいる。だからNCSというプログラムを作ったんです。つまり僕は「モチベーション格差」と戦っていたともいえます。モチベーションがある人とそうでない人の差は開いたままなので、そこをどう埋めるか、という。

羽田
羽田

それってどうやったら埋まるんですか?

喜多
喜多

バンデューラ博士の三者相互作用にもありますが、モチベーションがないという現象の背景にはその人に応援してくれる人の繋がりがない、という原因が潜んでいます。だからモチベ―ションが湧かない。そしてモチベ―ションが無くて行動しないから、自分を応援してくれる人の繋がりもできない。そういうループに陥っているんです。だからポジティブな繋がりが多い人とそうでない人がいる。特に地方は東京に比べると圧倒的に繋がりがない。その格差を埋めようと。

羽田
羽田

繋がりができれば人はモチベーションが生まれる、と。

喜多
喜多

はい。実際僕はNCSで様々なプログラムをやっていますが、参加した人たちのやりたいことの発見のお手伝いに、それに基づいた繋がりづくりのサポート行っていました。そしてそこでかなり変わる人たちを見てきた。人生の軸としての動名詞的なやりたいことも、仮説としての名詞のやりたいことも、みんなワークショップをやれば見つかりますが、やりたいことがあっても実際にはやらない人も多い。自己肯定感が低いから内発的動機があっても怖くて実際に踏み出せない人もいるんです。そういう人たちは適切な人とのつながりを作るサポートをしてあげる。そうすると、人は一歩が踏み出せるようになる。近くにいる人たちとの人間関係を修正するのも結構大事なんです。

自己肯定感が低い学生が増えている理由とは?

海外経験も豊富な喜多さん
羽田
羽田

そうそう、自己肯定感についても聞きたかったんです。僕も1年前に独立して、今まで以上に学生の近くで色々な話を聞く機会が増えました。それでこの1年で感じたのは自己肯定感が低い学生って想像以上に多いんだな、ということで。これってどうすればいいんですか?

喜多
喜多

自己肯定感が低い人は戦後、ずっと増え続けているそうです。自分の何かを表現すると否定されるかもしれない、何か良くないことが起こるかもしれない、という不安や恐怖の根底意識があるんです。何か自分で選ぶということ自体がしにくいんです。

羽田
羽田

それってなんで起きるんですか・・・?

喜多
喜多

主に原因は二つあると思っています。まずはもう近代化の極みであるということ。モノづくり、合理化を突き詰めていくと個性を殺した方がお得なんですよ。自動車メーカーの社員それぞれが個性発揮してそれぞれが思い思いの部品を作り始めたら大変なことになりますよね。つまり自己肯定感が低い人が増えているのは教育や産業を通じて国全体が近代化を推し進めてきた結果だということ。そしてもう一つの理由が親子関係ですね。愛情を十分に受けていない。受け入れられてきたという状況を体感したことが少ない。

羽田
羽田

・・・なんかそれってどうしようもなくないですか・・・。

喜多
喜多

だから先ほどお伝えした近くの人間関係を修正していく必要があるんですよ。自分が存在していい、と自覚するのが自己肯定感の姿です。だからその感覚を取り戻していかないといけないんですが、取り戻すのも結構な地獄です。自己肯定感が低い人は、自分を表現すると否定されるというアルゴリズムができている。それを塗り替えないといけない。そもそも否定されるのが怖い人たちが自分の弱い部分、見たくない過去と向き合って、こわいながらも、自分を表現して、周りから受け入れられるという経験を繰り返さないといけない。

羽田
羽田

なるほど、だから近くの人間関係を変えないといけないんですね・・・。

喜多
喜多

偉そうに言っていますが、僕にもそういった一面はまだまだ沢山あります。そしてそれとぶつかるたびに毎回泣きじゃくりながら、向き合って、ゆっくりと少しずつですが、よくなっている気がします。もう本当に大変です(笑)。でもそれが人生における成長の本質なんじゃないかなぁ、とも思っています。

羽田
羽田

しかしそうなると人間関係のあり方が大きく変わったこのコロナ禍は、大学生にどんな影響を与えたと思いますか?

喜多
喜多

まず言えるのは、コロナによって”変わらなきゃ圧力”が増えていることでしょうね。何かを新しく始める人が増えてきたと思います。それ自体はいいことだと思いますし、今までよりチャンスを掴む人も増えるでしょう。ただし、それはあくまで金銭や環境や気持ちに余裕がある人が中心の話です。場所やお金に縛られてる人は、変わるために動くことも難しい。モチベ―ションが低い人は、動きたくても動けない。

羽田
羽田

確かに。オンライン化によって学生は移動時間や場所からも解放されましたものね。ただそのできた時間を使って何かを始められる人は限られている、と。

喜多
喜多

僕から言わせれば、理想の大学生活は授業は全部フルリモートですよ。それで東京を離れて地方に安いお金で仲間といっしょに、いい場所に住む、と。そこでできた金銭や時間的余裕を使って何か新しいことを始めればいいんです。食費生活費で月10万円くらい浮くから、それを1年続ければ、世界一周だってできる。

羽田
羽田

東京を出ろ、と。

喜多
喜多

ただ、やはり東京は情報やつながりが圧倒的に多い。そのリアリティは一度体に入れたほうがいいとは思います。だから一度東京に出て、東京のリアルとつながりを体に取り込んだら東京を離れるのがいいんじゃないかと思っています。

大学を卒業する理由と、大学生へのメッセージ

現在は箱根を拠点に活動中!良い笑顔!
羽田
羽田

いや、相変わらず深い洞察コメントをありがとうございます。ところでどうして大学を卒業するんですか?以前聞いた時は「2020年の東京五輪は学生として迎える!」とおっしゃってましたが・・・。

喜多
喜多

まあ、本当は五輪があるはずだった2020年までは大学生やってた、ということで(笑)。僕は人の認知や行動、ソーシャルイノベーションをずっと学び取り組んできたんですが、次のテーマを研究したくなった、というのが学生を卒業する理由ですね。

羽田
羽田

ほお、次は何を研究するんですか?

喜多
喜多

一言で言うと「ヘルスケア」ですね。メンタルがダメになってしまっている人は明らかに体調不良なんです。例えばですが腸内環境が人に与える影響は大きいんですよ。心のバランスを整えるセロトニンのもと(5-HTP)はおよそ腸でできているんですが、その5-HTPのもとのトリプトファンってアミノ酸は玄米から取れるんです。そして玄米の消費量と先ほど話題に出ていた自己肯定感は同じように下がってる。「あれ、これもしかして関係あるのでは…?」なんて仮説を持っていたりします。じゃあ食生活を変えれば、自己肯定感ってあがるの?食習慣と腸内環境と気候風土と国民性と文化って全部つながっているのでは?とか。今後はそうしたものを研究し、社会実装していきたい。そのためにいったん今の大学院は卒業しよう、と。今は慶應の先端生命科学研究所とかに出入りしています(笑)

羽田
羽田

やはり根本は変わらないんですね。アプローチ手法が増えるってことですかね。喜多君らしい。では最後に、2021年を生きる大学生にメッセージをお願いします。

喜多
喜多

いい友達、いい仲間を作ろう。それができれば人生万々歳、と伝えたいですね。それを求めていろんなアクションをしてほしいし、それを成し遂げるための時間、機会は無限にある。それをやれた分だけ人生楽しくなるはずです。お伝えしたい本質はそこですかね。

羽田
羽田

ありがとうございます。ちなみに最後にもう一つ聞かせてください。12年間学生やってもやり残したことって何かありますか?

喜多
喜多

あろうはずがありません(笑)。大学生じゃなきゃできなかったことで、やれなかったことは何もない。全てやったと言えます。でもこれがスタンダードになってほしいですよね。大学生活4年は短すぎる。4年間で卒業する必要なんてないと思ってます。みんな自分のペースで学んだり実践したりして、10年くらいいてもいいんじゃないですかね(笑)

【卒業記念特別付録】やりたいことを見つける方法資料

最後に、喜多さんが大学院で研究していた「本当にやりたいことを必ず見つける方法」の一部を短くまとめたスライド資料でご提供!ものすごい言語化力・・・・。

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