街角キャリアラボ流のビジネスモデル分析に準じて解説していきます!
今回は人気の「旅行業界」!。まあ、旅行って人気ですよね。何故ならみんな旅行が好きだから!
でも、そんな理由だけで旅行業界をみていては勿体ない。普段馴染みのある業界だからこそビジネス視点で見ると新しい発見があって面白さがわかるはず。ぜひご覧ください!
さあ、旅行業界についてみていきましょう。
なお旅行業界は現在過渡期にあり、業界各社とも新たなビジネスモデルの模索をしている最中ですが、今回は現在の主要収益源である「旅行代理業」について解説します。まずは街角流の「商材」「顧客」というフレームワークで分析してみます。このフレームワークについてこちらで解説していますのでご確認ください。
商材:旅行に関する各種手配の代行業
顧客:旅行手配を旅行のプロに任せて手配したい個人や法人
もう少し具体的に言語化してみましょう。
旅行業界の「商材」
まずは商材。「旅行に関する各種手配の代行業」と書きましたが、本質的な価値は「旅行のプロがユーザの事情に合わせて最適なプランを提案して付加価値をつけながらいろいろな手配をしてくれる」事にあります。
後述する「業界トレンド」で詳しく書きますが、インターネットの旅行サイトが登場するようになって飛行機や新幹線、また宿泊ホテルなどは個人でもネットを使って予約ができてしまいますよね。ただ、旅行代理店は旅行のプロ。旅行代理店にお願いすれば、私たちは自力で魅力的な宿を探し手配する手間を省いてくれます。また旅行代理店の持っているオリジナルプランにはクーポンをはじめとした特典がついています。
「より魅力的な旅行手配の手間軽減&オリジナル特典の付加価値」。これが旅行代理店が顧客に提供する最大価値となるでしょう。
旅行業界の「顧客」
では次に顧客。簡単に言えば「旅行手配を旅行のプロに任せて手配したい個人や法人」となりますが、もう少し具体的に考えてみます。
あなたは友達と旅行に行くときに旅行代理店にお願いしますか?多分あまりしないのではないかと思います。自分でホテルも移動手段も予約しちゃいますよね。そのほうが早いし安かったりします。
では先ほど考えた商材の提供価値を享受しやすいのは誰でしょう?ヒントは旅行代理店の店舗に行くとわかります。店舗に並んでいる国内外の旅行パンフレットを見ていると、家族旅行や新婚旅行、またご年配向けの旅行プランが並んでいます。
つまり個人旅行ではなく、ある程度”ちゃんとした旅行をしたい人”が旅行代理店を頼るのではないかと言えます。また初めて行く海外など、右も左もわからない場合は旅行代理店にマルっとお願いしたほうが安心ですよね。土地勘もなかったりしますし。学生や若い人ではなく、資金力がある程度ある家族や高齢者の方がメインターゲットと言えそうです。
そして法人も顧客対象です。法人の旅行と言われてもピンとこないかもしれませんが例えば社員旅行。また旅行ではありませんが全社員が集まる表彰式などの大型のイベントなども旅行代理店が会場や演出、遠方からくる社員の出張手配などをしているケースがあります。
もっとイメージしやすい法人営業は中学や高校の時のお楽しみ、修学旅行。まさか学校の先生が学年全員の飛行機やホテルの手配をネットでしてるわけありませんね(笑)。そう、修学旅行は旅行業界において重要なビジネスなのです。
このように、旅行代理店のメイン顧客は「団体旅行に行きたい個人や法人」になるのです。
さて、そんな旅行業界ではどんな職種があるのでしょうか?当然ながら多くの職種があるので全部はご紹介できませんが、先ほど解説した「商材」「顧客」と結びつけて考えてみましょう。
まず商材。先ほど言語化した「より魅力的な旅行手配の手間軽減&オリジナル特典の付加価値」を商材とする上で、どんな仕事があるかを想像してみてください。それが職種につながっていきます。
まず想像しやすいのは旅行ツアーなどを企画する仕事ですね。「旅行の企画をする」と聞くと楽しそうですが、もちろん決して楽な仕事ではありません(楽しいとは思いますが)。
自分が行きたいかどうかではなく、想定顧客のニーズに合うのかどうか、お客様に手の届きやすい価格帯にするためにはどうするのか、競合他社の商品との差別化ポイントはどこになるのかーなど、あらゆるところから入手したデータや情報をもとに採算が取れるプランにしなくてはなりません。マーケティングの感覚や数字に強い人材が活躍するでしょう。
そしてプランが出来たら宿や航空券などを仕入れる仕事が必要です。旅行代理店は自分たちで宿や移動手段を持っているわけではないので(例外を除く)、他社から仕入れて来なければなりません。前述した企画部門と連携しながら、より良い条件でホテルの宿などを押さえていかなければならないのです。
さて、これで商材ができたとしましょう。他社に負けない魅力的な旅行プラン。でもこれだけでは一銭にもなりません。顧客にアプローチする仕事があるわけです。
まず想像がつきやすいのは店舗の販売スタッフですね。豊富な旅行知識を持ち、来店したお客様のニーズを聞きながら最適な旅行プランを提案していく仕事になります。
ただ実際に店舗に訪問してみるとわかりますが、店内には本当に膨大な旅行パンフレットが置いてあります。スタッフの方もパンフレット全ての内容を把握しているわけではありません。私も何度かカウンターのお世話になったことがありますが、担当のスタッフの方はパンフを見ながらそれぞれのホテルや担当会社に電話をして確認してくれます。こうした手間を全て代行してくれるのは本当にありがたいですね。僕たちは煩わしさから解放され、純粋に旅行だけに集中することができます。でもそれが実現するには店舗スタッフの丁寧さやホスピタリティが大事です。
今ご説明した店舗スタッフは「To C」型の仕事ですが、法人相手の「to B」の場合は法人営業が担当することになります。自分の担当するお客様がおり、お客様にお伺いして何らかのニーズを聞き出し、それを旅行を絡めた提案を行っていく仕事です。ビジネスパーソンとしての常識、嗅覚はもちろんのこと、課題ヒアリング能力や交渉力、また受注した後に発生する社内各部署との調整などの現場力が求められますね。
繰り返しになりますが、これらの職種は本当に一例です。もっともっと多くの職種が存在します。ビジネスモデルと照らし合わせて、どんな職種があるかを想像してみてください。
さて、前述したとおり旅行代理業界は現在変革期にあります。インターネットはあらゆるビジネスのあり方を変えてきましたが、旅行代理業界も同様。大きな存在として楽天トラベルやじゃらんに代表されるような旅行手配サイトが2000年代初頭に登場して勢力を拡大していきました。皆さんもネットで宿や航空券を手配することが当たり前で、旅行代理店のカウンターに相談に行く方が珍しいのではないかと思います。
つまり旅行代理ビジネスは無くならないまでも、この先も規模は縮小していく事は自明。旅行代理店は新たなビジネスモデルの模索を始めているのです。
業界最大手のJTBはこれまでの旅行業からソリューションビジネスへとビジネスモデルの転換を急いています。ソリューションビジネスとは、顧客の課題を解決するビジネスのこと。JTBはこれまで培ってきた旅行のノウハウやネットワークを活用し、顧客課題解決型のサービスを提供し始めているのです。
例えばMICE。MICEとはMeeting(会議・研修)、Incentive(招待旅行)、Conference(国際会議・学術会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとったもので、要は企業や教育機関などの法人が開催する大規模なイベントのことを指します。会場手配や演出、また参加者の交通手段や宿手配などを一式丸々引き受けることで巨額の売上をあげていくのです。
最近の面白い事例を一つご紹介しましょう。2019年に日本で開催されたラグビーW杯。このW杯で、JTBはヨーロッパで注目されてきつつあるスポーツホスピタリティという新しいビジネスを手掛けました。B to Bのビジネスです。
これはどういうビジネスかというと、W杯観戦チケットだけでなく専用の個室や、その中で提供される一流シェフの食事やお酒などをパッケージ提供するビジネスです。
企業はJTBから自社専用個室パッケージを購入し、ビジネスで優待したいクライアントをご招待するのです。W杯をクライアントと一緒に特等席で観戦し、十分にエキサイトした後に自社個室にご案内し、美味しい料理とお酒で試合の感想を語りながらビジネスの話をしていくー。
ヨーロッパではこの”スポーツホスピタリティ”を通して商談をすることで契約の成約率が高まるなどの成果が出ているそうで、JTBはそこに目をつけて日本でビジネス展開をしているのです。
他にも地方創生に関する新ビジネスや教育ビジネスなど、調べてみると「こんなこともやってたの?」という面白い事例がたくさん出てくるはずです。どういうビジネスモデルなんだろう?という観点で事例を見てみてください。
またJTB以外の各社も新規事業に取り組んでいます。HISはハウステンボス買収が有名ですが、ホテル事業に力を入れていたり、太陽光発電や電気自動車などの分野にも参入を検討していると報じられています。
インターネットという外的要因によって変化せざるを得なかった旅行代理業界ですが、外的要因はインターネットだけではありません。これは歴史を問わず旅行業界の宿命ですが、自然災害や国際紛争などによって観光事情は大きく変化します。どんなに企業努力をしてもどうしようもない外的環境に影響される業界と言えるでしょう。
いかがでしたでしょうか。
ビジネスモデルをもとに業界や職種を捉えてみるとより具体的に業界のことがわかるはずです。この視点をもとにして、さらに業界研究を進めてみましょう。