fbpx

【業界解説】食品メーカー業界

こんにちは!街角キャリアラボ コアメンバーの国際基督教大学2年 千葉郁実です。

今回は、街角キャリアラボのビジネスモデル分析に基づいて、「食品メーカー業界」の分析をお届けします!

街角流ビジネスモデル分析

早速、食品メーカー業界について見ていきましょう。まずは、街角流の「商材」「顧客」というフレームワークで分析してみます。


商材:加工食品の製造
顧客:料理を手軽に作って食べたい個人や法人

もう少し具体的に言語化してみます。

食品メーカー業界の「商材」

先ほど、商材を「加工食品の製造」と書きましたが、本質的な価値は「メーカーが顧客の料理の工程を減らしてくれる」ことにあります。

「??」と思った方も多いかもしれません。多くの方は食品メーカーと聞くと「商材は食品」と想像すると思いますが、ここまで具体的に「商材の提供価値」を言語化することが街角流。

古代まで遡れば、採集してきた木の実や草、狩猟してきた動物の肉などにちょっと火を入れたり、あるいは生で食べたりなんてことを遠い昔の先祖はやっていたと思います。しかし、今の時代、そんなワイルドな自給自足生活を送っている人はほとんどいないでしょう。でも、私たちは昔よりもずっと多様な料理を、簡単に作って食べています。海の向こう側で食べられていた料理を味わうこともできています。では、どうやって私たちは簡単に様々な料理を作って味わっているのでしょうか?

それは、誰かが農業や畜産業に従事して野菜や肉などが作られ、それらをまた別の人が調理しやすいように加工しているからです。この加工には、いわゆるレトルト食品や缶詰だけでなく、味の決め手となる調味料やエネルギー源である小麦粉・油など、また、炭酸水やお茶などの飲料も含まれます。前者の製造を担当する食品メーカーは、いかに顧客の代わりに多くの調理工程を減らせるかが鍵になります。後者はより機能や種類の充実した食品の原料を提供できるかを考えて製造しています。

「多くの調理工程の削減と、機能・種類の充実がもたらす利便性」が、食品メーカーが顧客に提供する最大価値と言えるでしょう。

食品メーカーの「顧客」

次は顧客に移りましょう。先ほど「料理を手軽に作って食べたい個人や法人」と挙げましたが、ここではもう少し具体的な顧客像を考えていきます。

みなさんは食品メーカーから直接商品を買うことはありますか?例えば、小麦粉が欲しいときに、わざわざ製粉会社の元へ行って買いに行くでしょうか?そんなことありませんよね。私たちが食品を買う場所は、スーパーやコンビニなどがほとんどだと思います。

つまり、食品メーカーが製造する商品は消費者である私たちに向けて作られていますが、私たちの手元に届くまでに、卸売業者やスーパーなどの小売業者のもとに一度届けられます。このビジネスモデルを「B to B to C」といいます。

では、スーパーに買い物へ行ったときのことを想像してみてください。目の前には様々な加工食品が陳列されていると思います。インスタント食品や缶詰、お惣菜の素などが目につくでしょうか。はたまた、グルテンフリーの小麦粉や種類豊富な醤油、ずらりと並んだコーヒーや紅茶、お菓子なんかもありますね。それらを買う人はどんな人でしょうか。

インスタント食品やお惣菜の素は、一人暮らしやお年寄りなどの一度に作る料理の量が少ない人、共働き家庭などの普段忙しくて料理する時間を短縮したい人などが挙げられると思います。一方、小麦粉や醤油などのレシピに載っているようなものは、料理を作る全ての人に求められますが、特にこだわりを持って美味しい料理を作りたい人はたくさんの種類の中から好みの製品を選ぶでしょう。嗜好品などは晩ご飯にはなり得ませんが、ちょっと生活を良くするために、生活にゆとりのある人が買うものと考えられます。

そして、ご飯を食べるとき、私たちは自炊で作ったものだけでなく、レストランでも食べますよね。レストランの人も私たちと同じように、スーパーで同じものを買っているのでしょうか?そんなことは大抵の場合ありません。大人数に食べさせるのにスーパーでいちいち買っていたら、スーパーの商品がまるでなくなってしまいます。彼らの場合は、食品メーカーから卸売業者を通じて大量に必要なものを購入することが多く、このビジネスモデルも「B to B to C」です。

このように、食品メーカーの主な顧客は「料理時間を短縮したい個人や法人」と「美味しい食べ物を追求する個人や法人」となります。

食品メーカー業界の主な職種紹介

ところで、食品メーカー業界ではどのような職種があるのでしょうか。先ほど紹介した「商材」「顧客」と結び付けて、主な職種を考えてみましょう。

まずは商材を考えましょう。ビジネスの根幹である商材を考えるのは企画の仕事です。「多くの調理工程の削減と、機能・種類の充実がもたらす利便性」を価値とする商品を企画するには、顧客のニーズを把握する必要があります。顧客のどんなニーズを満たすのか、他社との違いは何か、顧客が手に取りやすい価格かどうか、それでいて採算は取れるのかなど、考慮する点はいくつもあります。マーケティングや数字に精通する人には、このような仕事が合うのではないでしょうか。また新製品の開発においては、研究開発(R&D)職との連携も必要になるでしょう。

そして、商品イメージを設計できたら、実際に商品を作るための材料を調達しなくてはなりません。メーカーは基本的には原材料を自社生産していないため、生産者から調達する必要があります。どこからいくらでどのくらい調達するかを考える職は、一般的にサプライチェーン職と呼ばれます。企画の考える採算性を満たしつつ、製造の際に滞りなく材料が揃うように、原材料の入手や配送にかかるコストと商品の販売価格とのバランスを考え、物流の流れを構造化できる人が必要とされます。

また、サプライチェーン職は生産の管理も行います。具体的には、工場の供給量が市場の需要量に見合うように常にマネジメントをしています。生産管理においては、需要量に応じて適切に供給量を調節できるような、バランス感覚のある人が向いているでしょう。

先ほど、サプライチェーン職が需要に応じた供給量を調節すると言いましたが、消費者の需要量を上げるには広告宣伝が必要です。広告宣伝と言っても、やみくもにテレビCMを出したりするのは、宣伝にかかる費用の割に製品を買って欲しい消費者に商品を認知してもらえないでしょう。消費者の中でも年齢や生活スタイルなどの属性ごとに、商品の機能などを効果的に宣伝していく必要があります。

ここで活躍するのが広告宣伝担当です。2020年現在、消費者が接するプロモーションメディアは複雑・多様化しています。TVCMやWebメディア、紙媒体やオフラインでの展開など、後述するブランド・マーケティングと連携しながら、商品の持つイメージと消費者の行動特性の変化を常に見逃さず、広告効果を最大化していく仕事です。マーケティングやメディアリテラシー、また数字に強い事が求められるでしょう。

商品を買ってもらうために、消費者に着目して商品機能を宣伝する広告宣伝を紹介しましたが、もう1つの方法があります。それは商品の持つブランド力を向上させて、消費者に購入したいと思わせる方法です。ブランド・マーケティングといって、その商品が感覚的に好きだな、買いたいなと思わせることです。食品だけに限りませんが、消費者にどのようなイメージを持ってもらうかはtoCビジネスにおいて非常に重要な要因です。商品パッケージやプロモーションのタレント起用、商品コピーなど、消費者のペルソナを踏まえた上で最適なブランドイメージを構築していきます。マーケティングの知識は勿論、社会の時流を読む力などが求められます。

消費者に購入したいと思わせられたとしても、完成した商品が実際に店頭に並ばないと、消費者に商品が届きません。ここで卸売業者への営業が始まります。卸売業者の求めるものを的確に、他の商品と組み合わせながら販売できるかが重要になってきます。卸売業者がどんな小売店に何を販売するのかを考え、その販売戦略に対して自社製品を提案できる交渉力を持つ人が必要になります。

以上、食品メーカーにおける主な職種でした。ただ、これらの職種は一例で、企業には多くの職種が存在します。各企業のビジネスモデルを踏まえて、どんな職種が考えられるか想像してみましょう。

食品メーカー業界の動向

食品は生活必需品なので、業界としてあまり大きな変動はないと言えそうです。しかし、共働き家庭や単身世帯、高齢者世帯の増加や、最近では外食における消費税が10%になったことで、調理時間を短縮する、小型サイズのレトルト食品や冷凍食品などに人気が出て、市場規模が拡大しています。今後は、日本の人口が減少する中で海外市場の開拓が進んでいくでしょう。

例えば、国内食品メーカー大手の味の素は、海外に拠点を多く持ち、近年の売上高は日本食品市場よりも海外食品市場の方が上回っています。また、同じく国内食品メーカー大手の明治は、経営計画で海外事業を今後のグループの成長の基盤として位置付けています。日本ハムなど他の食品メーカーも海外事業展開を自社の今後の成長において重要な施策の一つに上げています。

縮小する国内市場へのアプローチとしては、高付加価値商品の提供が挙げられます。健康に良いものなどのこだわった原材料を使用したり、地域限定で発売したりと、希少性の高さを志向した商品が次々と投入されています。

健康志向に関連して、今、世界的に植物性代替肉(植物肉、代替肉)の開発が進められています。アメリカでは実際に植物由来の代替肉が店頭に並べられていて、国内では日本ハムが「NatuMeat」というブランド名で今後販売することが明らかになりました。

また、世界的に人口が増加している中で、今後の食糧の確保のための昆虫食開発も進んでいます。昆虫食は栄養価が高く、畜産物に比べて環境負荷が低いこともあって、国連食糧農業機関(FAO)も昆虫食の開発研究を推進しています。研究開発は世界的な動きとなっていますが、日本では例えば無印良品が「コオロギせんべい」を商品開発し、今後発売される予定となっています。

食品メーカーの業界分析はいかがでしたでしょうか。

普段、私たちは消費者として、食品メーカーの製造する商品を何気なく購入していて、皆さんの中には顧客については想像しやすかったと感じた人もいるかもしれません。ですが、商材は食品メーカーが作り出すもので、消費者だった自分が食品メーカー側の視点に立って考えることは、新鮮な気持ちになったのではないでしょうか。筆者としては、農業や畜産業などと食品メーカーの違いがどこにあるのか気づけた点や、レシピに載っているような食品の原料の製造も食品メーカーが行うと知ることができた点で、非常に今回の分析が面白かったなと感じています。

この記事が自分の気になる業界を分析する上で助けになると嬉しいです!

参考資料

味の素株式会社, 2016,「味の素株式会社 2016年3月期 決算概要」(https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/event/presentation/main/05/teaserItems1/00/linkList/00/link/FY15_Result_J.pdf)2020.2.5 閲覧.

味の素株式会社, 2017,「味の素株式会社 2017年3月期 決算概要②」(https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/event/presentation/main/017/teaserItems1/00/linkList/00/link/FY16_Results_J.pdf)2020.2.5 閲覧.

味の素株式会社, 2018,「味の素株式会社 2018年3月期 決算概要③」(https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/event/presentation/main/01111/teaserItems1/00/linkList/00/link/FY17_Results_J.pdf)2020.2.5 閲覧.

株式会社良品計画, 2019,「無印良品 コオロギせんべい 開発のお知らせ」(https://ryohin-keikaku.jp/news/2019_1121.html)2020.2.5 閲覧.

時事通信社, 2020,「日本ハム、代替肉に本格参入 家庭向けにハンバーグなどを3月に発売」時事ドットコム(https://www.jiji.com/jc/article?k=2020011701127&g=newitem)2020.2.5 閲覧.

日本ハムグループ,「中期経営計画」(https://www.nipponham.co.jp/ir/policy/plan.html)2020.2.5 閲覧.

明治ホールディングス, 「経営計画」(https://www.meiji.com/investor/management/)2020.2.5 閲覧.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です