ロシアのウクライナ侵攻を皮切りに、世界情勢は大きな変化の時代を迎えています。
しかし、あらゆる国でさまざまな情報が溢れる中、世の中の動きを正しく把握するのは至難の技。
そのため、現代の複雑な世界情勢を正しく理解するには、G7・NATOなど国際的な組織についての知識が必要不可欠となってきます。
そこでこの記事では、これから社会人になる読者の皆さんに向けて、今知っておきたい国際的な組織を解説!
ぼんやりとしか知らない組織があれば、この機会にしっかり理解しておきましょう。
各国の首脳が集まる会議
まずは、世界各国の首脳が集まる重要な会議「G7」と「G20」について解説していきます。
G7
G7は「Group of 7」の略称で、フランス・米国・英国・ドイツ・日本・イタリア・カナダの7か国及び欧州連合(EU)が参加する枠組です。
毎年各国の首脳が集結して国際会議(G7サミット)を開催しています。
サミットはその年の議長国で実施することとなっており、2025年のG7サミット会場はカナダ・アルバータ州カナナスキスでした。2023年には日本(広島)でも開催されています。
G7サミットでは、以下のような内容が行われます。
G7サミットでは、世界経済、地域情勢、様々な地球規模課題を始めとするその時々の国際社会における重要な課題について、自由、民主主義、人権などの基本的価値を共有するG7各国の首脳が自由闊達な意見交換を行い、その成果を文書にまとめ公表します。(引用元:外務省外務省「G7に関する基礎的なQ&A」)
G7は、自由・民主主義・人権などの基本的価値を同じくする各国が意見を交わし、方向性を合わせるための重要な枠組み。
アメリカや日本など、自由主義・資本主義の国々が集まっています。
2025年のG7サミットでは、中東地域の対応やロシアのウクライナ侵攻について話し合われました。
さらにG7サミットでは、各国首脳会議だけでなく、日米や日英などの二国間会議、各国の外相・貿易大臣による会合なども開催されます。
G20
G7に以下の12ヵ国の首脳が参加したさらに大きな枠組みが、G20です。
- アルゼンチン
- 豪州(オーストラリア)
- ブラジル
- 中国
- インド
- インドネシア
- メキシコ
- 韓国
- ロシア
- サウジアラビア
- 南アフリカ
- トルコ
G20で議論される内容は「世界経済、貿易・投資、開発、環境、気候・エネルギー、国際保健、デジタル」など。 経済を中心としたあらゆる分野に及びます。
そして、G20に参加する19ヵ国及びEUの国内総生産の合計は、なんと世界の約8割。
経済分野に大きな影響力を持つG20では、毎年全首脳が集まるサミット(「金融・世界経済に関する首脳会合」という)が開催され、世界経済を成長させるための議論が行われます。
また、G7との違いは、先進国だけでなく新興国も含めた枠組みであることです。
経済状況や総人口も大きく異なる各国が対等に話し合うG20サミットは、世界経済にとって大きな役割を担っていると言えるでしょう。
経済に関する国際的な組織
次に経済に関する国際組織について解説していきます。
NATOやOECDなど、見聞きしたことがある単語も多いのではないでしょうか?どれも世界情勢を理解するために重要な組織なので、この機会にぜひ知識をつけておきましょう。
NATO(北大西洋条約機構)
NATOは、北大西洋条約機構の略称で、ヨーロッパとアメリカを中心とした30ヵ国が加盟しています。
NATO最大の目的は、「加盟国の領土及び国民を防衛すること」。
そのために行う集団防衛・危機管理・協調的安全保障の3つが組織の中心的任務です。この中には、日本でよく話題となる「集団的自衛権の行使」も含まれています。
日本はNATOには加盟していませんが、「基本的価値とグローバルな安全保障上の課題に対する責任を共有するパートナー」として加盟国と緊密に連携しています。
NATOといえば、2022年のロシアによるウクライナ侵攻が始まった原因の一つ。
近年、東欧諸国でNATO加盟に向けた動きが増えており、ロシアは周辺の国々がNATO加盟国となって攻撃してくることをかなり警戒しています。
そのため、隣国であるウクライナがNATO加盟に積極的な姿勢を示していることに激しく抗議し、親欧米派の政権をなんとか倒そうとしているのです。
そもそも、NATOは本来ソ連の勢力に対抗するために西側諸国が作った軍事同盟でした。
現在は軍事同盟よりも西側諸国の政治・経済の仕組みをとっている国の枠組みという側面が強いですが、ロシアにとっての脅威であることには変わりないのでしょう。
OECD(経済協力開発機構)
OECDは、経済協力開発機構の略称で、北米と欧州を中心とした38ヶ国が参加しています。
加盟国から2,000名以上の専門家が集まり、幅広い分野で政策の研究・実現を行っている世界最大の*シンク・タンクです。
*シンクタンクとは、政治、経済、科学技術など、幅広い分野にわたる課題や事象を対象とした調査・研究を行い、結果を発表したり解決策を提示したりする研究機関のことです。think tankという言葉通り、頭脳集団などと表現されることもあります。(引用元:ELITE NETWORK「ビジネス用語集 シンクタンクとは?」)
OECDは自由主義経済の発展のために作られた組織で、以下の3つの目的を持っています。
(1)経済成長:加盟国の財政金融上の安定を維持しつつ、できる限り高度の経済と雇用、生活水準の向上の達成を図り、もって世界経済の発展に貢献すること。
(2)開発:経済発展の途上にある地域の健全な経済成長に貢献すること。
(3)貿易:多角的・無差別な世界貿易の拡大に寄与すること。
引用元:外務省「OECD(経済協力開発機構)の概要」
自由主義経済とは、個人の経済活動の自由を認め、個人の成長とともに社会全体の経済も発展するという考え方のこと。
このため、OECDには中国をはじめとする社会主義国家は加盟していません。
また、ロシアは2000年代に加盟申請を行いましたが、2014年のクリミア併合により凍結。さらに2022年のウクライナ侵攻を受けて、完全に加盟プロセスが終了しました。
OECDでは、本部のあるフランス・パリで年に1回「OECD閣僚理事会」を開催しています。
OECD閣僚理事会は、加盟する全38ヶ国が参加する大規模な国際会議です。経済産業大臣・外務大臣・経済政策担当大臣などが集まって議論を行います。
世界最大のシンク・タンクであるOECDでの議論は、G7やG20へ波及することも多く、加盟する各国にとっては自国の経済・社会政策や制度を考える重要な機会。
開催時期がG7サミットの1ヶ月ほど前となっているため、日本にとっても重要性の高い会議です。
APEC(アジア太平洋経済協力)
APECは、アジア太平洋地域に位置する21の国と地域による経済協力の枠組みです。
1980年代から動き出したヨーロッパ地域のEU(欧州連合)やアメリカ大陸のNAFTA(北米自由貿易協定)の流れを受け、1989年に始まりました。
APECはアジア太平洋地域の経済成長と繁栄に向けて、貿易・投資の自由化・円滑化や地域経済統合の推進などを行っています。
【参加国・地域一覧】
オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、香港(ホンコン・チャイナ)、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、台湾(チャイニーズ・タイペイ)、タイ、米国、ベトナム
引用元:外務省「APECの概要」
アジア太平洋地域は「世界の成長センター」と言われ、参加国だけで世界人口の約4割、貿易量の約5割、GDPの約6割を占める重要な地域です。そのため、この地域の成長は世界経済全体の成長にも大きな影響を及ぼします。
また、APECには「ABCB」というビジネスに精通した民間人によって構成された諮問機関があり、各国・地域の首脳のニーズと現場からの具体的な声に対応できるのも特徴。
政界・経済界のトップが意見を交わし合うAPECは、アジア太平洋地域の経済成長になくてはならない枠組みとなっています。
2021年には、APECプトラジャヤ・ビジョン2040を実施するための指針である「アオテアロア行動計画」が採択されました。
今後約15年間かけて、「2040年までに、開かれた、ダイナミックで、強靱(きょうじん)かつ平和なアジア太平洋共同体とする」という理念を掲げたAPECプトラジャヤ・ビジョン2040の実施に向けて活動していきます。
まとめ
- 今年のG7サミットでは中東地域やロシアのウクライナ侵攻が議題に上がった
- G7とG20の違いはG7との違いは先進国だけか、新興国も含めているのか
- NATO、OECD、APECなど様々な地域で経済協力のための枠組みがある
普段何気なく目にするニュースの内容も、組織の目的や設立背景などを知っていればスムーズに理解できます。
特に2022年からはロシアのウクライナ侵攻があり、世界情勢の把握は就職先を考える上でも重要なポイントでしょう。
今回解説した内容を参考に、国際関係や世界の動きについて関心を持っていただければ幸いです。