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数字で測れない”幸せ感度”を大切に。フランスの田舎町が教えてくれたこと

Bonjour!街角グローバルの連載2回目はフランスのお話。
芸術の都パリや、美食の街リヨンに美しい地中海を一望できるマルセイユ…
華やかな印象があり、憧れる人も多い国フランス。
いつか行ってみたい!住んでみたい!という人も多いのではないでしょうか?

そんな華やかな都市部から少し足を伸ばすと、どこまでも続く農地。実はフランスは食料自給率が100%を超える農業大国でもあります。
わたし、nemuは学生時代に”農家ホームステイ”として、そんなフランスの田舎町で働いていました。利用したのは、日本にもあるWWOOFという農業団体。
農家で働く代わりに、食事と宿を提供してもらえて言語も学べる素敵なプログラムを提供しています。詳細は以下の通り。

利用サービス:WWOOFFrance
料金:無料(登録料約20€、現地までの渡航費のみ別途必要)
言語:言語条件は各農家次第。英語かフランス語が日常会話程度できると便利です。
期間:7〜9月のうち、3つの農家を各三週間
場所:山羊チーズ農家(コルシカ島)、ラベンダー農家(プロヴァンス)、羊・乳牛チーズ農家(トゥールーズ郊外)

応募に際して条件や審査等はなく、登録後自分で農家さんに連絡をとってお仕事をもらいます。

わたしが体験したのは、プロヴァンス地方のラベンダー農家やピレネー山脈でのチーズ販売….。
外国語専攻でも農学専攻でもない私が、ただ「素敵そうだな」と思って飛び込んだ世界。
外国人が誰もいない田舎町で、たった一人で奮闘した日々から見えてきた
フランス人の「幸せ感度」を大切にする生き方のヒントを紹介します。

チーズ農家の部屋から見える景色。山の向こうはスペインです。


「お金で買えない」豊かさを加えて日常をもっと豊かに

とても豊かに毎日楽しそうに暮らしていて、裕福なんだろうな、と思いながら一緒に過ごしていた家族が
実際は中流階級で、決して贅沢をしているわけではなかった。というフランス人家族に何度も出会いました。

その度に、お金を使わずにどうしてそんなに豊かに生きられるんだろう、と
不思議に思ったのを覚えています。

そんな彼らのライフスタイルを観察しながら見えてきたのは、
日常に“お金では測れない”工夫をたくさん取り入れている様子でした。

例えば、芸術
近隣の教会やホールで開かれる音楽会を細かくチェックし、
少しおしゃれをして家族で出かける様子を、週末や夕方にあちこちで見かけました。

例えば、自然
晴れた日には、街のメインストリートに各レストランのテーブルが並び、太陽の下でお酒やお料理を楽しむ人で溢れます。
公園に行くと、本とワインを持ってゆっくり過ごす人たちの姿が。
それは大都会でも、田舎町でも変わらないフランスのありふれた光景でした。

フランス人も憧れる地中海のコルシカ島。バカンスの時期はアウトドア好きな人が集まります。

フランスに来るまでの私は、空いた時間を全てアルバイトに使い、お金を貯めてきました。
1時間でいくら稼げる、休みがあるなら、何かしなければ。
そんな、常に切羽詰まったような感覚で生きてきました。

渡仏した当初も、余暇を充実させるフランスのライフスタイルに慣れず、
どこかでまだ焦っていた気がします。

でも、身の回りに溢れている「数やお金で測れない」幸せを日常に取り込むうちに
自分自身の心が軽く、豊かになっていることに気づきました。

フランスの児童文学「星の王子様」にはこんな話があります。
「大人たちは数字が好きだ。」数字を見ると、安心して全てわかったような気になる、というエピソードです。
数字や業績にとらわれ、自分の大切なものを見失っていないか、心の声を無視してしまってはいないか。
王子様のそんな一言は、忘れかけていた身の回りの幸せを思い出させてくれるような気がします。

自分が「幸せだ」と思える生き方を選択する勇気を

フランスとスペインの国境にある、ピレネー山脈麓の小さな街。
最寄駅から車で数時間かかる、山奥の街に暮らしていた時、
当時の私と同じ歳の女の子に出会いました。

近くの都市に行くことも、首都に行って働く選択もあったというその女の子。
まだまだ未熟な21歳の私にとって、遊ぶところも友達とショッピングできるところもない
辺鄙な田舎を敢えて選んで暮らすことは、ちょっとした衝撃でした。

地元で取れたオーガニック野菜は市場で旅行客に販売します。

「仕事やお金がない田舎町で暮らすことに不安はなかったの?」
素直にそう聞いてしまいました。今思うと、あまりにも身勝手な質問だったのかもしれません。
でも、そんな無知な私に彼女は
「うーん、私はお金がたくさんある暮らしが幸せだとは思わなくて。自然の中で好きな人たちと暮らすことのほうが、私にとっては大切だと感じられるの。」
と答えてくれました。

“社会が定義づける幸せ”ではなく、“自分が何を幸せだと感じるか”を、同じ歳なのに既に考え、実行している姿に、また衝撃を受けたことを覚えています。

それでも、まだ私たちは21歳。
社会の厳しさも何もわかっていないのに、という人はいるのかもしれません。

ただ、そう答えた彼女の姿には、甘えや幼さではなく、覚悟と勇気が見えていました。
とりあえず不安だから、とりあえずみんながするから。
そうやって他の人の後を続くのではなく、
自分は人生をどうしたいのか、自分が優先したい生き方はどんなものなのか。

フランスで出会った人たちは、そこを自分に問い続けているような印象がありました。

雨上がり、マルシェを片付ける様子。山に囲まれた村は朝晩とても冷えます。

仕事は自分の時間を削ってお金をもらうこと?

働く代わりに、無料で暮らすことのできる農家ホームステイを経験した一夏。
宿や食事をもらっているから、それに見合った仕事をしないといけない。
少しでも自分が役に立たないといけない。そう思っていました。

そうやって意気込んで飛び込み、最初に言われたのは〝君は何の為にここに来たの?〟ということ。
働き手として求められているんだ、と思っていた私に
農家さんが求めていたのは、そこからわたしが何かを得てくれることでした。

仕事がないか尋ねたり、農家さんのやっていることを手伝おうとすると
いつも〝大丈夫だから。それは僕が一人でもできるから。君は何がしたいんだ?〟と言われて。
自分より上の人が働いている中で1人休むなんて耐えられず、
自分の時間をここに注いでいるのに、この特別な環境をどう生かすかまで考えられていなかった事実に、とても悔しくなりました。

相手から仕事をもらえないと、何をしたらいいかわからず途方に暮れていた当時の私は自分の貴重な時間を、ただただ浪費しているようなものでした。

山の上にある、農家併設の小さなチーズ屋さん。

そんな苦い経験が教えてくれたのは、自分の時間を
いかに自分の学びや今後の人生の喜びに繋げるか、が大切だということ。
それは仕事だけでなく、自分の大切な人やものも全て。
自分がそれにどれだけの時間を費やしたかがそのものの価値を決めるんだと実感しました。

時間はお金にも変えられます。それで何か、好きなことに費やすことだって一つの選択です。
時間は技術にも変えられます。それが自分の未来をどう豊かにしてくれるのでしょうか。
時間は、何にだって変えることができます。

ただ、有限です。全ての人に平等に与えられているものであり、増やすことができません。

その大切な時間を、学校を卒業した私たちは仕事に大部分を費やすことになります。そこから何が得られるのか、自分の可能性や幸せをどう広げることができるのか。

お金や技術はもちろん、過ごす環境や人、将来への繋がり。
伏線的な多くの要素全てが、自分自身を豊かにすることに繋がってくれるということ。
フランスの綺麗な田舎町での日々は、そんな“仕事観”を大きく変えてくれる出来事でした。

まとめ

なんとなくおもしろそうだから、無料で言語も学べるから、といった理由で
踏み込んだフランスの田舎町での生活。
これまでの生活と全く違ったその世界は、様々な価値観や考え方を教えてくれました。

何を選ぶか、よりも自分がどうしたいか。選んだ道を、どう良くしていくか。
客観的に測る数字ではなく、心の声に従って生きる強さと自由を実感した出来事でした。

「フランスで最も美しい村」を巡ってみる

地方にある田舎の景観保護のための取り組み「フランスで最も美しい村」。
都市部に比べるとアクセスは悪いですが、公共機関を乗り継いで行ける村もたくさんあります。

リヨンから日帰りで行けるPerouges。中世にタイムスリップしたような街並みが魅力です。

フランス中部、Limoges近郊にある小さな村Carennac。この村の近くで採れたラベンダーを私が販売していた村です。村のあちこちに花が飾られ、小さいながらも華やかな魅力に溢れた、隠れた名所。

ここに注目!地域によって変わるオリジナルサラダ

パリ風サラダ、リヨン風サラダ、ニース風サラダ、、と
地域によってサラダの材料や盛り付けが変わるフランス。
初めて訪れた街のレストランでは、ぜひ地元のサラダをオーダーしてみましょう。
山羊のチーズやイチジク、くるみ入りなど、その土地の特性を活かしたおいしいサラダに出会えるはず。

リヨンの旧市街で食べたリヨン風サラダ。メインとデザートもついて1800円ほど。