こんにちは!街角キャリアラボ コアメンバーの国際基督教大学3年 千葉郁実です。
今までいくつかの業界をご紹介してきた業界コラムシリーズ。今回は、街角キャリアラボのビジネスモデル分析に基づいて、「ディベロッパー業界」の分析をお届けします!
ところで、ディベロッパー業界ってどんな業界のことかご存知ですか?ディベロッパーは英語の “developer” が由来なので開発を行う企業群のことですが、何を開発しているかというと不動産を開発しています。
では早速、ディベロッパー業界について見ていきましょう。まずは、街角流の「商材」「顧客」というフレームワークで分析してみます。
商材:建物や街の構成がもたらす生活利便性の提供
顧客:生活利便性を追求する個人・法人
もう少し具体的に言語化してみましょう。
ディベロッパー業界の「商材」
先ほど、商材を「建物や街の効率的構成がもたらす生活利便性の提供」と書きましたが、本質的な価値は「個人や企業がより便利な生活ができる基盤づくり」にあります。
え? ディベロッパーって “develop” からきているんだし、商材は大規模な土地の開発じゃないの? って思ったあなた。ここまで具体的に「商材の提供価値」を言語化するのが街角キャリアラボなんです!
まあ、いきなり街の開発なんていうスケールの大きな話を始める前に、ちょっと例え話をしましょう。今、あなたは家を建てることを決めました。どんな家を建てますか。広い部屋、大きな収納、効率的な導線、日当たりの良いベランダ…。いろんな条件が浮かんでくると思います。きっとそれは、今住んでいる家に足りないもの、家で不便だと感じているものなのではないでしょうか。
これはディベロッパーでも同じ。確かにディベロッパーは広大な土地を、その土地のある街に存在する交通機関やショッピングセンターなどの資源との組み合わせを考慮しながら、マンションやオフィスビル、ショッピングセンターなどに変貌させます。しかし、それは人々の生活がより便利になるように企画するのです。「人々の不便を解消し、その土地が持つ価値を最大化すること」がディベロッパーが提供する最大価値と言えるでしょう。
ディベロッパーの「顧客」
次は顧客に移りましょう。先ほど「生活利便性を追求する個人・法人」と挙げましたが、ここではもう少し具体的な顧客像を考えていきます。
先ほどの商材の価値を享受するのは誰でしょうか。ディベロッパーは土地の供給者である地主から土地を買い取ったあと、多くの場合はその土地を集合住宅やショッピングセンター、オフィスビルなどの大規模施設に生まれ変わらせます。ここで、少し建物の用途ごとに考えてみましょう。
例えば、マンションなどの集合住宅は1つの建物内で多数の家庭が共同で生活しているという特性から、他者からの交流や見守りという利便性を享受できる環境と考えられます。そのような場所の利用者は、子育て世帯や高齢者世帯、単身世帯などが挙げられるのではないでしょうか。
ショッピングセンターの場合はいかがでしょうか。ショッピングセンターが多種多様な専門店の集積地であることを踏まえ、多くの店舗を転々と見て回るよりも1回・1箇所で買い物を済ませたいと考えるような忙しい人々や、個々で趣味趣向の異なる家族などの大人数のグループが集まるでしょう。
また、ショッピングセンターに出店するショップを考えると、店舗建築などの初期費用を独立店舗の開店の場合よりも低く抑えられる点と、そのショップ目当てに来店するような客に加え、他の店での買い物のついでに来店する客を確保できる点から出店を決めることが多いと考えられます。出店店舗の特徴としては、店舗数の拡大戦略を取ってより多くの顧客との接点を増やしたいショップや、唯一無二のブランド店舗よりも同業他社との比較を厭わない店が多いのではないでしょうか。
続いてオフィスビルの場合では、自社でオフィスを建築するよりも低い初期投資や簡単な維持・管理という点から、自社ビジネスの本質的部分に人的・金銭的資源を注力したい企業が考えられます。また、複数企業が集まる建物であり、企業同士の商談やコラボがしやすいことが予想されます。このような新たなビジネスの誕生可能性を求めて、企業はオフィスビルに入居するのではないでしょうか。
ここまで、建物の主な用途で顧客層を考えてみましたが、建物が建設される地域によっても顧客層が変わってきます。例えば、東京でいえば渋谷のショッピング施設と日本橋のショッピング施設だと、年齢層やどのような価格帯の商品を求めているのかなどが変わってくるでしょう。
まとめると、ディベロッパーの主な顧客は「開発された建物を利用する個人・法人」となりますが、建物の用途や立地によって異なると言えそうです。
ところで、ディベロッパー業界ではどのような職種があるのでしょうか。先ほど紹介した「商材」「顧客」と結び付けて、主な職種を考えてみましょう。
まずは商材をもとに考えましょう。商材を提供するにあたって必要不可欠なのは土地です。その土地を仕入れるための営業職が考えられます。地主との土地取引においては、交渉力を発揮できる人に向いているのではないでしょうか。
次に、仕入れた土地を魅力ある商材に変化させる基盤を作るのは企画の仕事です。ディベロッパーにおける企画職は、公共交通機関などの街の既存の資源を活かしながら、「人々の不便を解消し、その土地が持つ価値を最大化する」商品を企画します。そのためには、実際に街の人々の元に足を運び、顧客の感じている不便さや、顧客が気づいていないものの利便性の向上に繋がるポイントなどを把握することが必要です。マーケティングの資質がある人に企画職が向いているでしょう。また、開発金額と販売金額、開発地周辺の歩行者の数と彼らの消費行動などの兼ね合いも考慮しなくてはならず、数字に強い人が求められます。
また、企画の仕事には、描いた開発イメージを建物に落とし込む仕事も含まれます。ディベロッパーは通常、建物の詳細な設計を設計事務所に、建設をゼネコンに金額交渉をして依頼し、建築工程の管理を行なっており、交渉力を持つ人、複数の組織の間に立って事業をまとめて遂行できる人が向いているのではないでしょうか。
そして、建物ができたらそれらを販売します。建物販売においても営業職が活躍しますが、ここでの営業職は、建物に入居してもらえそうな企業などに直接アプローチするだけでなく、価値提供したい顧客との販売仲介をする不動産屋に営業します。土地の仕入れ時の営業職と同様に交渉力のある人が求められますが、提供価値を潜在的に求める顧客にアプローチするための緻密な販売戦略を構成できる人も必要になるでしょう。
完成し販売された建物は長期的に管理・運営されます。管理・運営の仕事には、清掃や点検は専門業者に依頼することが多く、業者との交渉時には交渉力が問われます。また、建物に入居する人や企業の活動を妨げないように清掃・点検日程などの管理計画を業者とともに組むことが要求されるため、多数の入居者とのスケジュール調整力も求められます。
ここまで、ディベロッパーにおいて取り上げた主な職種を下の表にまとめましたが、これらの職種は一例で、企業には多くの職種が存在します。各企業のビジネスモデルをもとに、どんな職種が考えられるか想像してみてください。
ディベロッパーは1つの大規模施設を建設することもありますが、複数の大規模施設の建築を通じて、街全体を開発することも少なくありません。現在、街の開発においては郊外と都市部で開発の志向が異なり、郊外では宅地の新規開拓が、都市部では街の再開発が活発に行われています。
特に、2021年夏までには東京オリンピック・パラリンピックが開催される予定で、世界中から多くの人々がやってくることが予想されますよね。そんな東京都心部では複合開発が近年、積極的に行なわれています。
例えば、虎ノ門では「自然」と「ウェルネス」を基軸に、仕事や教育、住環境をシームレスに構成したまちづくりが森ビルによって進行中です。先日、虎ノ門ヒルズ駅の新規開業がニュースになっていたので、知っている人も多いのではないでしょうか。虎ノ門ヒルズや六本木ヒルズ、アークヒルズなど、既存の建物や街との連携を考慮しながら、計画が進められているそうです。
また、東京駅の周辺では、三菱地所などがオフィス・商業ビルを中心とした複合開発を行なっています。特に、今まで日本一の高層ビルだったあべのハルカスの300mを抜いて、390mもの高層ビルが常盤橋付近に建設される予定です。数年後には、東京駅の街並みもガラリと変わるでしょうね。
ここまで東京都市部の開発情報を取り上げましたが、東京だけでなくあなたの街でも大きな開発がきっと行われているはずです。ぜひ一度調べてみてください。
ディベロッパーの業界分析はいかがでしたでしょうか。普段、住んだり通ったりしている街も、何らかの意図を元に構成されていると考えるとワクワクしますよね。ディベロッパーだけに限りませんが、企業や業界の意図を明らかにする上で、業界分析は役に立つと思います。皆さんも気になる業界を「商材」と「顧客」を中心に分析してみてください!
参考資料
三菱地所, 2020,「TOKYO TOKIWABASHI 2027 東京駅前常盤橋プロジェクト」( https://www.mec.co.jp/tokiwabashi/) 2020.3.7閲覧.
森ビル, 2016,「国際新都心へ「虎ノ門ヒルズ」が拡大・進化 3つの大規模プロジェクトと地下鉄新駅の一体的都市づくりを一気に加速」(https://www.mori.co.jp/company/press/release/2016/04/20160413143000003194.html) 2020.3.7閲覧.