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コロナ時代から考える学生時代に身に着けておきたいSNSとの付き合い方

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が広がったことで、昨年と比べれば生活にかなりの差が出てきましたね。今となってはかなり慣れてきたものでも、昨年であれば想像もしなかったようなことが身の回りでたくさんあるのではないかと思います。

そんな中でも大きな変化だったのが、他の人との付き合い方だったのではないかと思います。特に緊急事態宣言が発令されていた時期は、外出することもままならず、他の人たちとのかかわりはネット上のみだった人たちが多いのではないでしょうか。「インターネットやSNSを活用すれば世界中の人といつでもつながっていられる」とは以前から言われていましたが、そのありがたみを一番感じたのは、私としてはこの1年が一番大きかったと思います。

このように便利なSNSですが、上手に使わなければかなり厄介者になってしまう可能性もあります。情報の発信先が明確にはわからない場合も多くあり、情報を発する側も受け取る側も注意が必要です。

今回は、COVID-19を通じて見えてきた、ニューノーマルに求められる新しいSNSとの付き合い方について、COVID-19に振り回され続けた医学生である私と一緒にぜひ考えていきましょう。

COVID-19はなぜ、今までにない新たな感染症なのか

SNSの具体的な話をする前に、まず少しだけその発展や普及を後押ししたCOVID-19について考えてみたいと思います。

この感染症がそもそもなぜここまで広がって恐れられているかというと、COVID-19の原因となっているウイルス(SARS-Cov-2といいます)は今までに全く知られていない未知のウィルスであったためです。そのため、人に感染したらどのような症状が出て、どのように予防、治療をすればいいのかがわからない、という点で非常に厄介でした。

しかし、このような新しいウイルスのような病原体がとつぜん現れるような病気は自然史の中でたくさんあったのではないかと現在は推定されています。とはいえ、この感染症は、世界中の人たちを等しく巻き込んでいきました。いったいどのような点が特徴的だったのでしょうか。

それが今回のテーマでもある、インターネットとSNSなんです。インターネットやSNSを通じて、新しい感染症についての情報が瞬く間に世界中へと広がりました。その結果、世界中の人たちがCOVID-19という新しい病気について恐れるようになり、時には根も葉もないような迷信により人々をさらなる不安に陥れたような状態もありました。この情報伝播速度のスピード感が、世界でこの感染症に対する戦略を練るにあたり、世論の声として大きく響いたのは間違いありません。

情報が世界中に回ることは、一般的に言えばとても好ましいことです。情報を持つもの持たざるものの間で生じていた格差が改善されれば、世界中の人たちがより適切な判断ができるようになる。そう思われていました。しかし、COVID-19では、どちらかといえば正しい情報よりも人々を恐怖に陥れるような噂話などのほうがより広がりを見せたといえます。その内容を具体的に書くことはしませんが、その状況を見て某ヨーロッパの教授は「COVID-19は世界的な『SNSパンデミック』だ」と嘆いていたのが極めて印象的です。

自分の恐怖とどう立ち向かう?

でもなぜ、正しい情報ではなく迷信などが広がったのでしょうか。これにはいくつかの説がありますが、その中核にあるのはやはり人々が「話して安心したい」という心理に基づいているのではないかと思います。

COVID-19のさなか、私たちは多くの時間を1人で過ごしていました。多かれ少なかれ将来を憂い、不安を感じた時間も長かったものと思います。私も実際にそうでした。

そんな中で不安になるような情報をふと目にしたり耳にしたりしたら、やっぱり誰かと話したくなりませんか?普段学校や会社で友達に会うのであればたわいもない話のタネとしてなっていたこのような話題が、誰とも会えなくなったことでSNSに流れ出したのです。これを見た次の人がまたSNSで流し…という連鎖が続き、一気に拡散していきます。理解を求められる正しい情報よりも、感情を揺さぶる怖い迷信のほうが、なんとなく伝わりやすいイメージがつかめますでしょうか。SNSはもともと情報を拡散しやすい構造になっていますので、この流れが生じると歯止めを利かせることは極めて難しかったといえるでしょう。

最も怖いのは、このような状態に私たちは知らず知らずのうちからなだれ込んでいっているという点です。その瞬間は、その話が自分では正しいものと思い込んでいるがために拡散してしまうわけです。後から見てみれば間違っていたかもしれない…と思っても、もうその拡散の流れは誰にも止められなくなっています。

このように、大事になるのは、1人1人が自分の恐怖に流されず、情報を適切に判断することになるといえます。

自分でどうやって情報を確認するかを考えよう

今まで以上に自分が見ている情報が正しいかを判断できる力が必要となってくるわけですが、具体的にどのようにすればいいのかを最後に考えてみたいと思います。

残念なことに、これを実践するための模範解答というものは存在しません。試行錯誤を重ねながら正しい道を歩むよう自分に言い聞かせるほかないのです。

ですが、正解がないとはいえ、その正解へとたどり着けるための確率は上げることができます。その方法をいくつか紹介します。

まず1つ目は、信頼できる情報源を持つことです。何事にも「100%確実!」というものはないですが、「この情報源であればおそらく正しいだろう」と思える情報源を自分で確保しておくことはとても重要です。

その次に、そのような情報源をなるべく複数、それぞれの分野で保有しておくことが望ましいと思います。1つだけではその情報源が正しいのかどうかの判断はどうしても悩んでしまうかと思いますが、自分が信頼できる情報源が複数、同じようなことを言っているのであれば、その情報についてある程度の信頼性は確保できると考えられるものと思われます。

少し身近な例を挙げて、COVID-19へのワクチンが開発されたニュースを考えてみましょう。

いくつかの製薬会社がCOVID-19へのワクチン開発に成功したと発表し、実に約9割に対して効果があるという報道が大々的にされました。そこにアメリカの大統領選挙の結果が発表されたこともあり株式市場はお祭りムードが漂い、将来に対しかなり楽観的な世論に動いたのではないかと思われます。

ですが、一部の医学界での反応は異なりました。医学の研究成果は論文を掲載する雑誌を通じて発表されるのが通例です。そんな雑誌の中でも有名なものは世界的にトップランクとみなされており、研究者としてはそんな雑誌に自分の記事が載ることは憧れになるわけです。

そんなトップランクの雑誌の中でも特に権威のあるNatureやThe Lancetなどは相次いで「ワクチンの効果に過度な期待をするなかれ」とも読める論説を掲載しました。ここではその詳細は省きますが、さすがは科学をけん引する雑誌とあって、ワクチン成果の根拠となった調査に対して鋭い洞察を展開しながらその問題点を指摘していました。

同じような論調の意見が掲載されている雑誌はほかにもあり、これらを読んでいくと、「なるほど、確かに現段階でワクチンができたからといって、これで『100%安泰!』って安心できるものではないな…」ということが少しずつ理解できてきます。

(別に、ここで何も皆さんの希望を奪いたいわけでは決してありません。ですけど、期待を上げすぎると落ちた時の落差がやはり耐えられるものか、と考えるとやはりこのあたりの表現が、実際に書いて発表するとなるととても難しいんです…。なお、これはワクチンの「有効性」についての話であり、「安全性」を議論しているのではありません。ワクチンについて今わかっていること、わかっていないことを整理するのが大切だと言うことです。)

もちろんこのようなお話は、この原稿を書いている段階ではどのマスコミからも発表されているのを聞いたことがありません。つまり、正しい情報を探すためにはどこを見て、それをどう解釈するか、自分の頭を使ってできるだけの力を養う必要もあるといえるでしょう。

おそらく、今後このワクチンに関しては、副作用の評価などについて様々な話が出てくるでしょう。センセーショナルな見出しも増えるかもしれません。ですが、見た目だけに流されず、しっかりと事実を見極めていく必要があります。ある意味COVID-19はそのような能力を発揮できるかどうかの登竜門なのかもしれません。

コロナはむしろ情報格差を生む?

このように、正しい情報を得るということ1つとっても、非常に労力がかかるご時世になってしまいました。情報がありふれてしまっているからこそ、どれが正しいのかがとてもあいまいで分かりづらくなってしまっているのです。そのような意味では、情報を適切に得られる人と得られない人の間で情報格差はむしろ拡大していくといえるのかもしれません。

今までは当たり前すぎてあまり強調されることのなかった分野ですが、ニューノーマルともいえるこのご時世、情報の正否の判断ができるという力も、生きていく上では重要な要素になってくるのではないでしょうか。それを鍛え始めるべきタイミングは今しかありません。

文献

  1. The Lancet. COVID-19 vaccines: no time for complacency. Lancet. 2020 Nov 21;396(10263):1607. doi: 10.1016/S0140-6736(20)32472-7. PMID: 33220729.
  2. Callaway E. What Pfizer’s landmark COVID vaccine results mean for the pandemic. Nature. 2020 Nov 9. doi: 10.1038/d41586-020-03166-8. Epub ahead of print. PMID: 33169027.
  3. Heaton PM. The Covid-19 Vaccine-Development Multiverse. N Engl J Med. 2020 Nov 12;383(20):1986-1988. doi: 10.1056/NEJMe2025111. Epub 2020 Jul 14. PMID: 32663910; PMCID: PMC7377255.
  4. Doshi P. Will covid-19 vaccines save lives? Current trials aren’t designed to tell us. BMJ. 2020 Oct 21;371:m4037. doi: 10.1136/bmj.m4037. PMID: 33087398.